生活と文化の総合センター

 「アート農園」は、美術・工芸・デザイン・ファッションはもちろんのこと、音楽やスポーツにいたるまで、生活全般に関わる様々な活動の中から「心の栄養」という成果物を収穫し、それを糧に豊かな文化生活の提案をしていきます。
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アート農園「収穫の蔵事業」夏休み親子林間石彫教室概要

この事業の目的

1 背景
 文化芸術振興基本法が制定されて3年余りが経過しましたが、少子高齢化が進行する今日、小・中学校など教育機関における美術教育の現状は社会一般のなかで経済効率優先の価値観や学歴偏重など美術教育に対する無理解が蔓延し、危機的状況に陥っています。平成14年4月から学校完全週5日制が全面実施され、それに伴って授業時数の削減が行われ、図工・美術の年間授業時数も大きく減少しました。授業時数削減に伴う影響は以前から予測されていたことですが、それが現実のものとなり数年余りを経た今、教育現場の美術教育が直面する危機的状況は、予想を遥に超えたものとなっております。授業時数の削減による影響は、生徒にとっても深刻です。活動が細切れになり、じっくりと心を集中させて取り組むゆとりがないなど、創造的な活動を主眼とする美術の学習活動にはどう考えても不適切な条件を強いられています。このような条件の下で、第15期中教審の第一次答申で述べられているような「ゆとり」をもった授業の中での、個に応じた指導の充実が可能かどうかは火を見るよりも明らかです。また高校以上の現場においては専門学校にでも通わないかぎり美術史など、我が国の文化を学ぶ機会は皆無にちかく、専門家を欠いたなおざりの講義に終始しているのが現状です。それは実技授業においてもさほど変わりがありません。このような状況は全国的な問題でもあり決して埼玉県に限ったことではありませんが、将来の文化活動において暗澹たる影響を及ぼしていくように思われます。このような現実を回避するささやかな手だてとして、県民とアーティストの積極的な交流をはかり、互いの理解を深め、日常のなにげない生活のなかで自然に美術や芸術を取り入れていけるような環境作りや継続的な文化活動のありかたを模索し実践することが急務であると考えます。
2 この事業の目指すところ、実施による効果
 アート農園が計画する芸術理念を基本構想においた生涯教育事業や芸術体験の機会を提供し蓄積していく「収穫の蔵事業」の一環として県内外のアーティストや美術教育専門家を講師に迎え、県内の地域社会における県民参加型の新しいコミュニケーションと実践のありかたを模索します。参加した県民の方々が参加アーティストとの交流のなかから豊かな創造性を獲得し、自分自身の感性を磨きながら生きていくために必要な活力と生きがいを収穫できるような開かれた場づくりを目指します。以下は本事業を実施することによって期待される効果です。
@地域県民と参加アーティストとの心の交流が育まれ、長きにわたりそれが継続されること。
Aアート作品の創作だけに片寄らず、共に創ることや見ること、学ぶことの体験が地域県民と参加アーティスト相互に新たな地域社会のありかたを示し、地域社会の発展につながるような産業を生み出す可能性や切っ掛けが見いだされること。
Bこの事業に関わった多くの若いアーティストや子供達がさらなる飛躍をとげること。
C地域住民や地域の子供達に豊かな創造性や感性が養われ、「楽しむ力」が育まれていくこと。
D美術や芸術に関わる疑問を明らかにし、その取り組み方や解決方法を研究することにより県民の「芸術力」「文化力」が年々高まっていくこと。

事業内容

1 具体的な内容
@事業概要
 埼玉県川口市の林間公園において伊豆半島や新島で産出される坑火石(コウカセキ)を素材にして埼玉県内の親子や子供達を対象に、石彫体験のワークショップを開催いたします。坑火石はキューポラのある町、川口ではなじみ深い溶鉱炉の内側にも張られている軽石石材です。その石材を活用し県内外のアーティストを講師に迎え、夏休みの2日間公園の木陰で石器時代の人々の気持ちになってエスキース(模型)を考えたり石を刻んだりしながら創ることの楽しさ観ることの楽しさを体験します。また小さな勾玉作りやスライム作りなど簡単な図画・工作コーナーを設け、夏休みの宿題のアイデアについて子供達の相談を受け付けます。その他、美術・芸術に関わるあらゆる相談にも対応いたします。将来美術の道に進みたい方、デザイナーを志している方、展覧会を開きたい方など、県民の芸術力・文化力を高めるための専門家による相談コーナーを設け可能な限り応対いたします。
A実施日
*石彫その他:2005年8月13日(土)14日(日)9時〜15時
*作品展示:2005年8月16日(火)〜19日(金)11時〜17時
*開催場所 埼玉県川口市川口駅西口リリアパーク(川口西公園)内及び川口総合文化センターリリア内ギャラリー
B対象者・人数
 埼玉県内の親子・子供など埼玉県民を対象といたします。
*石彫の対象年齢は10歳程度でナイフ等の刃物の扱いができれば参加可能です。定員は100名限り、御家族・友人で参加申し込みも可能です。参加費用は坑火石1人あたり1個が原則で1000円かかります。 (石彫用坑火石30×30×30cm程度のものを100人分御用意いたします。)
*勾玉作りやスライム作り、図画・工作など石彫意外のコーナーは幼児から参加可能です。これも数に限りがありますが可能な限り受付致します。2日間でそれぞれのコーナー延べ200名程度を予定。材料は余分に御用意いたします。参加費無料。またオープニングセレモニーにおいて子供達を対象にお茶・ジュース・お菓子等を配ります。(100人分用意)夏場の暑い会場内での作業に影響を及ぼさないための配慮として計画致しました。
C対象地域
 埼玉県全域、(川口市、および近隣の市町村)
2 支援の対象やその数、把握の方法
 埼玉県内、川口市近隣地域の親子や子供、一般人の他、県内外のアーティストや一般・学生ボランティアなどを対象に、会期前にポスターやチラシ、ダイレクトメールなどで広く参加者を募ります。イベントに参加したすべての方々を記録し、カウントします。石彫参加者100名、その他の参加者500名前後を対象。

この事業に関連するこれまでの活動実績

 本団体の前身であるMASC都市芸術実際会議は、2001年1月よりアートと地域の振興に関わる活動について様々な研究、実践を重ねてきた経緯があります。
[例]関東近郊の医療施設(デイ・ケア・サービス)での「ふれあい・美術」と称するワークショップ・プロジェクトや法人・企業を対象とした潜在能力解放プログラムなど、現代社会に生きる様々な人々が求めている「癒し」に焦点をあてながら、アート・ワークショップの可能性を研究、展開してきたという豊富な実践経験。以下はその実例です。
◎医療法人社団 湖聖会 銀座医院ワークショップ・プロジェクトVol.1
「ふれあい・美術」(東京)を2003年7月23日開催。
◎医療法人財団 百葉の会 湖山病院ワークショップ・プロジェクトVol.2
「ふれあい・美術」(静岡県富士市)を2004年1月9日開催。
◎株式会社システムアリカ主催「潜在能力開発プログラム」2004年8月28日
◎アート農園MASC助成プログラム 2003年5月?2004年12月まで11名の作家を対象に助成支援。2005年度も引き続き継続中。
◎機関誌、都市芸術実際会議経過記録誌『MASC』2001年11月1日発行。1000部
◎美術雑誌『FACE』2002年9月10日発行。800部
◎美術雑誌『アートフィールド』2004年11月30日発行。800部
以降毎年2冊刊行継続予定。
◎『アートフィールド』出版記念展 2004年11/6〜11/28 画廊「あーとじょいばるば」にて開催。
◎川口市が運営する「市民アートギャラリー(仮称)」のコンサルテーション。
◎平成17年埼玉NPOまつりに展示参加、親子や子供を対象にしたワークショップを開催。2005年5月7日〜8日
◎NPO法人資産相談センター主催セミナーにおいて「アートの効用」について講演会に参加予定。2005年6月18日
その他美術館やギャラリーに出向き、勉強会を随時開催中。

今後の事業展開

 本事業は毎年開催することを目的として企画・計画されます。もとよりアート事業は社会教育の一環としてあるべきものであって、その効果が急激に現れるようなものではなく、じっくりと腰をすえて継続していくことが望ましいと考えます。昨今のすぐに結果を求め、利益を得ようとする風潮を反省し、我慢することを身につけ、真の創造の喜びが得られるような豊かな創造生活を獲得するためのモデルケースとして継続可能な提案を毎回提供していきたいと考えています。美術教育を取り巻く 厳しい現実を直視する中から、問題の本質は 何か、それを打開するためには何が必要なのか、私たちがなすべきことやなし得ることは 何かを探り実践していきます。また本事業を展開することによって得られる人材や制作された作品は限りのない収穫として後生に受け継がれ、地域社会に具体的な成果をもたらすことと確信いたします。財政面においては本事業の公益性、有効性を各方面にご理解頂き、広告掲載の協力や寄付金、会費収入、事業収入で自力運営が可能になるよう努力してまいりたいと考えています。

事業内容に関するアピール

1)有効性
 美術・芸術分野における閉塞感は今に始まったことではありません。近代社会が確立して以来、専門家の到来は一般社会から芸術家を遠ざけてきたように映ります。市民社会の一員でもある芸術家は自らの置かれている立場を理解し、社会にその営為を還元する必要に迫られています。アート農園は芸術家による一方的な提案を提供するのではなく、アートを核にした住民参加の活動をサポートしながら、如何にして地域社会の活性化をはかり、地域社会の発展の肥やしになりうるかを考えています。現代社会という砂漠にささやかなオアシスという文化基盤(インフラ)を構築することを目的として、本事業では県民と共に新しいコミュニケーションのありかたを見いだしたいと思います。見せること、創ることだけを目的とするのではなく、そのプロセスが如何に生かされていくのかを実践し、美術・芸術に理解のある埼玉県のイメージ作りに貢献していきたいと考えています。本事業を企画・運営していくのはアート農園という主催者側だけではなく、各々の役割を自覚した参加者すべての人々が個々の自律に向けて展開していけるような環境を構築していきたいと考えています。
2)公益性
 少子高齢化社会という現実を目の当たりにして、埼玉県に限らず、全国的に経済の冷え込みが深刻化している今日、それは文化活動においても同様のことだといえます。県の美術・芸術に関わる事業においてもさらなる文化振興の方策が急務だといえるでしょう。このような時代に地域社会のなかで人間の生きる基本である「生きがい」を見いだし、生きる目標を提供してくれるような専門機関を多くの県民が今必要としているのではないでしょうか?実社会において美術や芸術がもたらす恩恵は計り知れないパワーとこころの豊かさを与えてくれるように思います。官・民一体となって芸術力・文化力を高める新たなコミュニケーションの可能性を探りだし、ちかい将来、県民との相互信頼のなかから、芸術・文化の確かな成果を分かち合いたいと思います。
3)専門性
 本団体の会員には美術家はもとより、建築家、工芸家、写真家、イラストレーター、ギャラリー経営者、大学教員、教育研究者、美学者、美術評論家、美術館学芸員、美術雑誌編集者、アートディーラー、アートコーディネーター、イベント・プロデューサー、デザイナー、アートディレクター、音楽プロデューサー、美術愛好家、学生、など多方面で活躍する人材を擁し、芸術に関する総合的で専門的な知識を背景としながら地域社会における芸術理念を背景とした芸術実践を提供しています。また本団体にはアートと地域振興に関わるアートプログラムが多数存在し、県内はもとより多方面で有数のアーティストネットワークと連携しながら、様々なイベント作りや展覧会、講演会の企画・運営を展開しております。
4)費用対効果
 事業計画における必要経費等は現在のアート農園で達成可能な規模を想定して計上されています。講師料の謝礼等、計上された金額はいずれも他の教育機関やNPO団体と比較しても無理のない範囲に設定されています。