同時多発テロ事件/芝章文
相手の見えないテロ組織との戦い、新しい形の戦争が始まろうとしています。わたしたちが抱える危機意識、ぼんやりとした見えない不安が急速に現実的な姿を現わしてきました。湾岸戦争のときにも考えさせられましたがこのような有事に直面したとき、美術・芸術に携わるわたしたちはいつも無力感を感じてしまいます。わたしたちをとりまく環境がゆっくりと、しかし確実に変化していることはなんとなく感じてはいましたが、平和ボケした頭では到底この急速な危機をともなった現実に対応できないように思います。深刻な事態に陥らないためにも、またたとえ日本が最悪の選択を引き当てたとしても、うろたえないで適格な判断がくだせるように慎重に情勢を見守りたいと思います。先程、ブッシュ大統領は始めて正式に、イスラム過激派組織アルカイダを率いる、指導者、オサマ・ヴィン・ラディン氏を名指しして、徹底的なテロリストに対する報復と撲滅にむけて戦うことを表明しました。日本も後方支援という名の参戦を余儀なくされ、いよいよ恐ろしいシナリオが現実味を帯びてきました。わたしたちは、美術家として、個人としてアメリカの報復攻撃を自分の戦いとして受け入れるのか、あるいはこの戦いをいっさい拒否するのか、どちらかの選択をせまられています。自分の家族が、あるいは身内や友人がこの戦いで直接被害を受けたとしたら、厳しい選択です。むかし究極の選択などという笑い話がありましたが、この選択は冗談ではすみません。MASCにおいても今回の事件については他人事ではないはずです。真剣に立ち向かい考えてみたいと思います。みなさんはいかがでしょうか?
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