「絵画とは歴史である。そして歴史とはさまざまな方法であろう。」(宇佐美圭司『20世紀美術』岩波新書)。

2018年4月、東京大学の地下食堂に展示されていた宇佐美圭司の大作「きずな」が、撤去・廃棄されたことが話題になった。東大生協によると、201 7年9月27日「業者がカッターのようなもので切り刻んだ」(東大生協の担当者)ということである。宇佐美作品は歴史から消えてしまったのだ。
廃棄を決めた東大生協は「わからないから捨てた」と繰り返すばかりで、理由を説明しないという。

日本では文化財や美術作品が無自覚に棄損されてしまうことがある。
これは、現場の専門職員や専門家によるコレクションの(経済的理由だけではなく)文化的・歴史的な価値づけを軽視し続けてきたためでもある。
このような事例も含め、日本で年間に廃棄される美術作品は一体どれほどの数に上るのだろうか?
私たちの共通財産でもある美術作品を少しでも守り、残していくための施策が今急がれている。